、ほら、これが火星の文化だよ。さあ、これでも信じないかねといってやりたいのだ」
火星の文化! 船みたいなもので交通しなければならぬほどの未開な火星ではない! 轟博士の言葉の奥には、わが地球人類にとっておだやかならぬ秘密の実在があるらしく感じられるのであった。
はたして博士は、何事を知っているのであろうか?
火星の秘密
かわり者の轟博士が、火星の秘密をあえて喋ろうとしない態度をみせると、僕は逆に、なんとしてもそれを聞きださずには我慢ができなかった。しかもそれを聞く機会は、この場において外にないような気さえした。
「ねえ、轟先生。さっき先生がおっしゃったことに、私ども地震学者も火星のことを考えに入れてやらねばまちがいが起るといったような意味が感じられましたが、それにまちがいはありませんですか」
僕は、すこし思う仔細があって、わざと搦んだもののいい方をした。
「わしのいうことに、絶対まちがいはない。加瀬谷は、それを信じなかった。あいつは見かけ以上の愚者じゃ」
「でも先生、私にも信じられませんね。わが地球の海底地震が、なぜ火星と関係をもつのでしょう。火星と関係をもつならば
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