ときに発する震動ではあるまいか。由来火星の生物は、わが人類のごとく動物の進化したものとはちがい、高等植物系統の生物であるからして、残忍無比で、敵としては非常に警戒を要する。加うるに、火星の生物は、体躯が矮小で、知能は高く、強大なる原動力を支配し、すでに地球上の地形風俗文化さえも調査ずみであり、実に恐るべき生物である。しいて、弱気をあげるならば、火星の気圧は地球のそれに比べてはなはだ低いので、おそらく彼等の体躯の脆弱さは、とても地球上の生存に適しないであろう。これはあたかも、人間が数百貫の大石の下で、これを支え得ないのと同じようなものである。ただし火星の生物が、あらかじめそれに対抗するほどの耐圧構造物を用意し、その中にはいって到来すれば別の話になるが……」
 僕は、あまりに大きい感動のため、ここでしばらくページから目をはなさないではいられなかった。なんという恐ろしい手記であろう。まさかと思っていた火星の生物が、もうすでにこの地球上に来ているのではあるまいかなどという手記にいたっては、戦慄以外のなにものでもない。本当に、火星の生物はこの地球上に来ているのかもしれない。花陵島付近の異常なる海
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