いわけにいかなかった。
だが、僕は案外楽々と、博士の部屋にはいることができた。室内は十坪ほどの広さであったが、隅々には、いろいろな器械をいれた函が雑然と並んでいた。またテーブルのうえには参考書やノートなどが、うず高く積まれてあった。壁には、博士のヘルメット帽子がかかっている。
僕の狙う鞄は、なかなか見つからなかった。もしや博士がそれをもって外出したのではないかと一時失望をしたが、それでも方々を探しまわっているうちに、荷ときをした一つの大きな空函《あきばこ》のうしろに、例の鞄がかくされているのを発見した。
僕は胸をおどらせながら、いそいで鞄をひっぱりだすと、卓上において開いた。鍵はかかっていなかった。
鞄のなかには、例のとおり書類が重なりあってつめこんであった。その下から、僕の見覚えのあるピストルを、とうとうひっばりだした。
早速僕は、ピストルを折って、弾丸《たま》をしらべてみた。
「おや、弾丸《たま》は一つも減っていない」
僕の予想は裏切られた。銃口を手提電燈の光に照らしてみたが、中は綺麗であった。
「おかしいぞ。ピストルは最近一発も発射されていない!」
僕は失望を感じな
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