かいないかをたずねたところ、博士は先刻《さっき》、身仕度をととのえて、町の方へでかけていったということである。今のうちならば、たしかに博士は留守だということがわかった。
これ幸いと、僕は小屋に忍びこむことにした。そしてサチ子は、僕の調べがおわって、博士の行いに何かの結論がつくまでは、小屋にかえらないで、同僚のところへ行っているようにとすすめた。サチ子はもちろん僕のいうことに同意したので、僕は再会を約束して、彼女とわかれた。
図らずも、僕は探偵をまねて、冒険を始めることとなった。小屋に近づくと、あたりはもうすっかり夕闇に小ぐらくなっているというのに、中には灯一つついていなかった。博士はいよいよ不在であることにきまった。僕はまんまと、窓をまたいで、屋内にしのびこむことができた。森閑とした屋内を、床をふみしめ、一歩一歩博士の部屋にちかづいたが、そのときの気持は、あまりいいものではなかった。たとい博士は不在でも、屋内には僕の予期しなかったような人殺しの怪物がかくれていて、いまにもわーっと飛びついてきそうな気がしてならなかった。
たしかに僕は、一種異様な妖気が屋内にたれこめているのを感じな
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