に。うちの先生にもおっしゃらないでね」
「ええ、いいませんとも、あなたがいうなとおっしゃるのならね。一体どうしたというのです」
 サチ子は、しはらく黙ったまま、砂地を歩いていたが、急に僕の腰にすがりついて、
「死骸が埋まっているところを見たのよ、大隅さん」
「なんです、死骸ですか」
 僕は、ぎょっとした。しかしそのときの戦慄は、まだなにほどでもなかった。
「そして、その死骸は、どこに埋まっているんですか」
「あたしの泊っている小屋の、すぐうしろの砂原の中よ、椰子の木が三本、かたまって生えているところの根元なのよ」
「どうしたのかな。そこが塚かなんかで、土地の人が死人を埋葬したんじゃないですか」
「いえ、いえ、ちがうわ」とサチ子は、いよいよ僕の腕をかかえこみながら、「大隈さん、その死骸というのは、解剖したように、手だの足だのがバラバラになっているのよ」
「えっ、バラバラ死体ですか」
 僕は、呼吸が停るほどおどろいた。
「そうよ、バラバラ死体なのよ。あたし、いやだわ。どうしましょう」
「どうするって――」僕にもどうしてよいかわからない。誰がそんなところにバラバラ死体を埋めたのか。
「あなた
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