いるのですが、とけないのです。僕の力でとけるはずがありませんよ」
「大隅さんは火星の影響を考えてごらんになったことがありまして」
「えっ、火星の影響ですか。あははは、あなたも轟博士の一門でしたね。いや、火星と海底地震とは、まったく関係がありませんよ」といったものの、そのとき僕はふと妙な気持に襲われた。
「だが。待てよ、この海底地震の原因をいろいろと探してもわからないのだから、ひょっと火星の影響という問題を研究する必要があるのかもしれないなあ」
「ほほほほ。とうとう大隅さんが、うちの先生にかぶれてしまいなすったわ、ほほほほ」
サチ子はさもおかしそうに、声をたてて笑った。
「あははは。とうとう僕も火星の俘虜《とりこ》になってしまったようですね。しかしこのような絶海の孤島で、あなたがたのような火星の親類がたと暮していると、どうしてもそうなりますね。いや、火星の生物にまだ取って喰われないだけが見つけ物かもしれない」
僕は諧謔を弄したつもりだった。それに覆いかぶせて、サチ子がほほほほと笑いだすだろうと期待していたのに、その期待ははずれてサチ子の笑声はきかれなかった。
僕は目をあげてサチ子の
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