のです。それが賢明ですから。あなたさまは、事件の秘密性をよく護って下さる方であり、ほんのちょっぴりしかお尋ねにならないし、そして思い切った方法で解決を短期間に縮めて下さる、その上に常に事件依頼者の絶対の味方となって下さる方だと世間では評判していますので、それで依頼に参ったわけですわ。この世間の評判は、どこか間違っているところがございまして」
「過分のお言葉でございます。とにかく早速ご依頼の仕事にとりかかることといたしまして、只一つお伺いいたしますことは、甚だ失礼でございますが、御つれあい様とのご情合はご円満でございましょうか」
女客は嘲笑の色を浮べたが、それは反射的のものらしく、すぐさまその色は消えた。
「はあ、至極《しごく》円満……つれあいはあたくしを非常に愛し、そして非常に大切にしてくれて居ります」
「あなたさまの方は如何《いかが》です、おつれあい様に対しまして……」
帆村は一つの機微にも神経質になることがあった。
「それは……」と女客は明らかに口籠《くちごも》ったがしかしおっかぶせるように「それはあたくしの方も、つれあいを愛しています。それはたしかでございます」
帆村は、あ
前へ
次へ
全35ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング