て、一体、かの男は奥様とどういうご関係の人物であるか、それについてお話し願いたいのですが……」
 探偵は、機会が到来したと思って、始めから知りたかった問題にとりついた。が、その結果は香《かんば》しくなかった。
「今までに何の関係もなかった男なんでございますの。これまで全然見たこともなかった人でございますの。あんな醜い歪《ゆが》んだ顔の人を、これまでに一度でも見たことがあれば、忘れるようなことはございませんもの。それなのに、あたくしは今、あの化物みたいな男にしょっちゅうつけ狙われているんでございます。ああ、いやだ。おそろしい。気が変になりそう……」
「そういう次第なら、警察へ訴えて、かの男に説諭《せつゆ》して貰うという方法が、この際もっとも常識的かと思われますが」
「ああ、何を仰有《おっしゃ》います。警察があたくしたちのために何程のことをしてくれるものでございましょうか。ただ、徒《いたず》らにかきまわし、あたくしたちをいらいらさせ、そして世間へいっとき曝《さら》しものにするだけのことで、あたくしの求めることは何一つとして得られないのです。ごめんですわ。あたくしは直線的に効果ある方法を採る
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