いた。木田氏は負けたのさ。そして法規により木田は密航者として艇外へ追放されることになったが、彼を迎えるものは死であった。なぜといって地球を出発してから三日も経っているんだから、落下傘を身につけたところで、とても生きて地上には降りられないわけさ。
 木田の処理は交川博士に命じられた。博士は流星号の機械関係の最高権威なのだ。博士は木田を落下傘で下ろすかわりに、別の方法を取ろうと考えた。それは博士がかねて研究した人体を電気の微粒子に分解して電送することだ。これは百パアセント成功するとは保証されていなかったが、落下傘を背負って暗黒の天空へ捨てられるよりは、余程《よほど》生還の可能性が大きかった。このことは博士から木田に対して密談的に相談せられ、木田は同意した。そしてそれはその夜午後十一時から始められることになり木田と博士は、艇内の人々から完全に離れて博士の機械室にとじ籠った。
 そのうちに木田が変になりだした。彼は碇と共にさっき運命の抽籤をしたが、それはトランプでやったんだが、このときになって木田は、碇が前にトランプ詐術の名手であったことを思出したんだ。そこで今日の抽籤も、碇が手練の詐術によっ
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