て勝札をつかんだものと思ったんだ。そこで碇を呪い、抽籤のやり直しを博士に訴えたんだが、これはもうどうにもならぬことだった。果して碇が詐術を使ったかどうか、証拠がないのだから、それに処置命令はもう出ている。博士は彼をなだめて、遂に仕事にかかった。博士は相手局としてかねて連絡のついている23XSY無電局を呼び出し、木田の身体を電気的に分解してその局あて電送したのだ。この作業がすんだのが午後十一時五十五分で、五十分かかったわけだ。序《ついで》だからいうが、私はこれを『通信部報告書』で読んだが、そのときにこれが一つの手懸りであるのに気がついた。なぜといって、もしも木田に落下傘をつけさせて艇外へ放出するのなら、こんなに五十分間もかかるはずはない。だからこんなに手間取ったのは、それではない処理がとられたのに違いない。一体それは何だろうという疑いになり、それから報告書の欄外にある博士の鉛筆書きの文字に注意を向けたのだった。
23XSYという記号は、すぐ無電局名だと分った。“いかさまだ”というのはよく分らなかったが、これはこんど木田氏から親しく話を聞くことが出来た。「要警戒勝者」という文字からは、気
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