撃ち倒したのだという。
「夫人はどうしました」
と、帆村は尋ねた。
「夫人は見えないのです。それから手廻り品なども見えないし、衣類戸棚も空っぽ同様なんです。夫人はどこかへ行っているらしいですね」
「おお、そうですか」
帆村は、ほっと小さい吐息《といき》をもらした。それから、甥に護られて暗がりの中にしょんぼり立っている木田のところへ行き、
「木田さん。もうこれ位でいいでしょう。さ、もう引揚げようではありませんか。そしてあなたはおさしつかえなくば、私たちと一緒にぜひ私の家へ寄って下さいませんか。今夜はあなたをお客さまにしたいのです」
意外な再生
蜂葉は、それから数日経って、久しぶりに伯父とゆっくりと語る機会を迎えた。彼は待ちかねていた木田と碇の事件の結末を知りたいと伯父にいった。
「碇も木田氏も共に船員仲間だったんだね。桝形探険隊の出航の話を聞くと、二人で謀議して密航を企てた。そして三日目に見つかってしまった。君も知っているとおり、隊では検討の結果、あと一人だけ収容できるが、もう一人はだめと分った。そこで二人のどっちが残るかを抽籤で決めた。すると碇が勝籤《かちくじ》を引
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