が、あたり五メートル四方が満月の下ほどの明るさになる照明灯を点じた。帆村の姿も蜂葉の姿も、光の中にむきだしであった。蜂葉の手に光っているピストルまでが……。
「静かに、静かに。あなたが逃げなければ、ピストルは撃ちません」
老探偵は、圧しつけるような調子で、自分に向い合っている醜怪なる顔の男に呼びかけた。彼は壁の奥に貼りつけられたようになっている。汚い帽子の鍔《つば》の下から、節穴のような両眼を光らせ、歪んだ口を引裂けるほど開いて歯をむき出している……
「木田健一さん。あなたのことはよく知っていますよ。無電局23XSYの技師の草加《そうか》君から、みんな聞きましたよ。あなたの不運と不幸に心から同情します」
老探偵のこの言葉に、その男の醜怪な顔は、奇妙な表情に変った。感情が動いたのである。
「私たちはこれからあなたと御一緒に、この上の家へ参りたいと思います。そして私たちは、徹頭徹尾、あなたの味方として、あなたにお手伝いしたいと思うのです。承知して下さるでしょう」
歪んだ顔の男は、一時|呆然《ぼうぜん》となっていた。だがようやく老探偵のいうことを理解したらしい。
「あなたがた、どういう
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