増員可能ト認ムル者五名、不可能ト認ムル者四名トナリタリ。(数字抹消)事ハ決マリタリ。抽籤《ちゅうせん》ノ結果、碇曳治ヲ隊員第四十号トシテ登録スルコトヲ、本会議ハ承認セリ。余事ハ交川《まじりかわ》博士ニ一任シ、処理セシム。――なるほど、三日目に碇は隊員の資格を得たんだ。そして定員は三十九名から一名増加して四十名になったんだ」
桝形の目が、凍りついたように帆村の横顔を見ている。帆村は相変らずそんなことには無礼者だ。(彼の甥が、忠実なる監視灯の役目をつとめて、情報を靴の音で知らせている)
「この日誌の文句は写して置こう」
と、帆村は手帖《てちょう》の中に連記する。
「桝形君。ここのところに抹消されたる文字があるが、これはどう読むんだろう」
「抹消、すなわち読まなくていい文字だ」
「だってこれを読まないと文章が舌足らずだぜ」
「文芸作品じゃないからそれでもよかろう」
「記録文学の名手が、ここでだけ手をぬくのは変だね。とにかくこの碇洩治が密航者としての処断を受けないで一命を助かり、隊員に編入せられたのに彼は大感激し、あとで大冒険を演じ流星号の危機を救い、一躍英雄となった――というわけなんだね
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