に、どすんどすんと空砲をはなって、猛練習であるが、その凄《すさまじ》い砲声を原稿に托《たく》して送れないのが甚だ残念だ。これより余は艦長にインタビューすることになっているので、ロイヤル・オーク号乗艦第一報をこれにて終る。
(×月×日、スカパフロー発)
余は今、純毛《じゅんもう》純綿《じゅんめん》のベッドに横《よこた》わりながら、昨日に引続き、スカパフロー発の第二報の原稿を書いているところである。寝ていては、報告が書きにくいので、起きようかと思うが、すぐサラ・ベルナールのような顔した看護婦が来て、上から押さえるので、やりきれない。もっとも余は、すっかり風邪《かぜ》をひいて、かくの如く純毛純綿の中にくるまって宝石のような暮しをして居れど、頭はビンビン、涙と洟《はな》とが一緒に出るし、悪寒《おかん》発熱《はつねつ》でガタガタふるえている始末《しまつ》、お察《さっ》しあれ――といったのでは、よく分らないかもしれないが、早くいえば、余は只今、ロイヤル・オーク号上に居るのではなく、スカパフロー軍港附属の地下病院の一室に横わっているのである。
余は、乗艦後二十四時間もたたないのに、こんな病院に横
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