ふんがい》して、軍港副官《ぐんこうふくかん》にどなり込んだのであるが、彼はむしろ意外だという顔つきで、余のためにこれほど、生命の危険なき安全なる軍港をえらび与《あた》えたのに、なにが気に入らぬかといい、四分の一世紀前の第一次欧州大戦のとき、ここが如何に安全であったかという歴史について、諄々《じゅんじゅん》説明があった。あのときには、しばしば英国全艦隊がこの港内に集結して鋭気を養っていたそうで、すでに試験ずみの安全港であるそうな。
 余が乗艦したロイヤル・オーク号は、現在このスカパフロー碇泊中《ていはくちゅう》の軍艦中で一番でかい軍艦であって、二万九千百五十トンの主力艦であり、速力は二十二ノット、主砲としては十五|吋《インチ》砲を八門、副砲六吋十二門、高角砲《こうかくほう》四吋八門、魚雷発射管《ぎょらいはっしゃかん》は二十一吋四門という聞くからに頼母《たのも》しい性能と装備とを有して居り、ことに高角砲分隊の技術については、英海軍中第一の射撃命中賞を有しているとかの噂も聞いて居り、さてさて素晴らしい軍艦に乗せてもらったものだと喜んでいる次第である。現に只今も、独機八機現わるという想定のもと
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