その後になってとつぜん生きかえり、自分で棺桶《かんおけ》だけはやぶりはしたものの、重い墓石をもちあげかねて、泣きうらんでいるような、それはそれはいやな声だった。
「ああ、寒い、寒い。寒くて、死にそうだ」
そのいやなしゃがれ声がつぶやいた。
しゃがれ声の主
「おお寒む。おお寒む。どこかはいるところがないだろうか」
しゃがれたうえに、ぶるぶるとふるえている声だった。一体だれがしゃべっているのであろうか。
「おお、見つけたぞ。あれがいい。おあつらえむきだ」
その怪しい声が、ほっと安心の吐息《といき》をもらした。
しばらくすると、煙の中で、かんかんと、金属をたたくような音がし、それから次には、ぎりぎりごしごしと、金属をひき切るような音がした。
「だめだ。はいれやしない」
大きな音がして、煙の中から、鋼鉄製《こうてつせい》の首がとんできて、壁にあたり、がらがらところげまわった。そのあとから、またもう一つ、同じような鋼鉄製の首がとんできて、それは壁のやぶれ穴から、外へとびだしていって、外でにぎやかな音をたてた。
「一つぐらいは、はいりこめるのがあってもいいのに……」
怪し
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