が、一つの生物であって、しずかに呼吸をしているように見えた。
いったいその気味のわるい塊は、何者であったろうか。
ガラスの箱のまん中に、その気味のわるい塊があり、その塊を左右からはさむようにして、大きな銀の盤のようなものが直立して、この塊を包囲《ほうい》していた。その銀盤は、よく見ると、内がわの曲面いっぱいに、たくさんの光った針が生えていた。
その針と反対のがわには、銀色の棒があって、これが左右ともガラス箱の外につきでていた。そして、ガラス箱の真上十メートルばかりの天井の下の空中にぶらさがっている二つの大きな火花間隙《ひばなかんげき》の球《きゅう》と、それぞれ針金によって、つながれてあった。
この大じかけの装置こそ、谷博士が自分の一生を賭《か》け、すべての財産をかたむけ、三十年間にわたって研究をつづけている人造生物に霊魂《れいこん》をあたえる装置であった。そしてその装置を使って最後に霊魂をあたえるには、三千万ボルトの高圧電気を、外からこの装置に供給してやらねばならなかった。
ところが、三千万ボルトと口ではかんたんにいえるが、ほんとに三千万ボルトの高圧電気を作ることはむずかしか
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