そんな手で、わしをだまそうとしたって、ききめはないぞ。さあ、小僧たちに何をおしえた」
「キャーッ、ウォーッ」
あいかわらず、サルは返事をしないのだった。
「いわないなら、いわんでもいい。いま聞いてやるからそう思え」
X号は、壁にかかってあるレシーバーを耳にあて、壁のボタンを押した。この檻全体が一つの脳波受信機《のうはじゅしんき》になっていて、中にいる谷博士の考えていることは、ちゃんとこのレシーバーから聞こえて来るのである。ところがその時は、キャーッという叫びと、ズーズーという雑音《ざつおん》がはいるだけで、かんじんの博士の考えは、何一つX号に分からなかった。
「はてな。こんなはずはないが。どうしたのかな。機械の故障かな。それとも博士がいつのまにか、ほんとうのサルに退化《たいか》したんかしら」
さすがのX号も、この時は、思わず首をひねったのである。
その時、うしろの廊下から、一人の機械人間があわててとびこんで来た。
「毒ガス注入《ちゅうにゅう》終りました」
「よし、それではすぐに圧縮空気《あっしゅくくうき》を吹きこんで、毒ガスを追いだせ」
「はい」
消毒作業はまもなく終った。
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