「それでは火焔放射器で、この扉を焼ききれ」
「はい」
一人の機械人間が、火焔放射器を扉にむけ、またたくまに、錠はとけて焼けおち、扉はガタンとひらいたが、中には五人の少年とサルが毒ガスにやられて、倒れていると思いのほか、残っているのはからの檻だけ――中には何もはいっていなかった。
「しまった。まんまと小僧めと博士にしてやられたわい。さては博士はサルと入れかわって、となりの部屋から逃げだしたと見える。だが、どうしてこの階から上へ逃げだしたろう」
X号はがくがくとからだをふるわせて、興奮《こうふん》しきっていたのである。
ところが、X号のおどろきは、まだまだそれではすまなかった。廊下いっぱいに、ラウドスピーカーから、大きな声がひびきわたった。
「非常警報、非常警報。
ただいま機械人間操縦室に、火焔放射器を持ったあやしい機械人間が七名侵入、目下|激戦中《げきせんちゅう》、応援《おうえん》たのむ。応援たのむ。オー、ウワァーッ」
けたたましい悲鳴《ひめい》とともに、その放送はばたりとたえてしまったのである。
さすがのX号も、こんどというこんどは恐ろしさにたまりかねた。あわててあたりを見まわすと、まわりにいた機械人間は、一人のこらずばたりと動かなくなってしまったのである。
さては怪機械人間の一味が、機械人間操縦室を占領したのだ。そうして機械を停止して、機械人間へ送る電波を切ったのだろう。
だが事はそれだけではすみそうにもない。万一《まんいち》彼らが、別の電波を送りはじめたら、機械人間はまた動きだして、自分へとびかかって来ないともかぎらないのだ。
X号は血まなこになって、エレベーターへとびこんだ。
「地上二十四階へ」
エレベーターは矢のように、地下十六階から、この研究所の最上階、二十四階へ飛びあがっていった。
機械人間《ロボット》の正体
「やれやれ、これでやっと一仕事かたづいたわい」
機械人間操縦室を占領した、怪機械人間の一隊は、さすがにほッとした様子であった。
部屋の中には、五六人の機械人間が、火焔放射器でやられてひっくりかえっており、壁にはめこまれた、数千のダイアルの前では、ちゃんと人間の形をした、人造人間が、うつぶせになって倒れていた。
「先生、これでもうこっちのものですね。機械人間さえやっつけてしまえば、X号の一人ぐらい、恐るることはありませんよ」
その声は、どうやら戸山君らしかった。
「いやいや、まだまだゆだんは禁物《きんもつ》だ。X号は、このうえ何を考えだすか、知れないのだから、なんとかして、あいつをこっぱみじんに粉砕《ふんさい》してしまわないと、どうしても安心はできないよ」
その声は、たしかに谷博士である。
「ではどうして、あの電臓《でんぞう》をたたきつぶすのです」
別の機械人間がたずねた。
「あいつを作りだしたのは、ぼくとしても、一生一代の失策だったよ。やはり人間というものは、自分の力の限界をさとるべきだった。生命を作りだすということは、神さまだけのなすことで、人間の力でくわだてることではないんだ。それをやろうと思ったのが、ぼくがこうして苦しむもとになったのだ……。
いや、今さらそんなことをいっている場合じゃない。X号の電臓は、三千万ボルトの高圧電流で生命を受けたのだから、ちょっとやそっとの方法では、殺すことはできない。ここにいたような、ふつうの電臓なら、実験室の百万ボルトぐらいで動きだした、下等な電臓だから、火焔放射器でのびてしまうけれど、あいつはそんなことではとうていだめだ。たった一つのこされた方法は……」
「それはいったいどうするのです」
「恐ろしい方法だが、いまここではいえない。それよりもまず、一刻も早く、外部に連絡をとろう。山形君、短波放送で、警察に連絡をしてくれたまえ」
「はい」
一人の機械人間が答えて、短波放送機に近づいた。
山形――といえば、どこかで聞いたような名ではないか。そうだ。X号によって、娘のからだの中へとじこめられた、山形警部が、あの地下室へあらわれた、怪機械人間の正体だったのである。
彼は、自分の体がはずかしいので、役所にも出ず、自分の家へひきこもったきりだったが、何度もとのからだにかえしてくれとたのんでも一向にらち[#「らち」に傍点]があかず、そのうちに博士がふしぎなことばかりやりだしたので、いよいよ博士の正体に恐ろしい疑いをいだき、一人の機械人間をばらばらに分解して、その中の機械をとりだし、自分がその中にはいって、機械人間のように見せかけ、この研究所の中へはいりこんで、内部の様子をさぐっていたのである。谷博士や少年たちが、地下十六階から脱出《だっしゅつ》する時も、やはり倉庫にはいっていた、予備の機械人間を分解し、その中にはいって逃げだしたのだっ
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