ぞ。これはひょっとしたら……」
博士は戸山の手をぐっと力を入れて握り、
「君たちは、気をつけなくてはならない。もしも何か怪《あや》しいことを見たら、すぐわしに知らせるのだよ。だが……だが、まさか、まさか……」
「なにをいっているのか、さっぱり分からない。おもしろくない。ほかの場所へいってみよう」
気味のわるい声がひびいた。
「え、なんといった。今、ものをいったのはだれだ」
「私だ。なにか用かね」
「君はだれだ」
「私かい。私は私だが、私はいったい何者だろうかね。とにかくあっちへ行こう」
がっちゃん、がっちゃんと、機械人間は、妙なことばを残して、奥の方へ歩みさった。
「だれだい、君は。ちょっと待ちたまえ」
「おじさん。今おじさんと話をしていたのは機械人間ですよ。奥の方へ行ってしまいました」
戸山は、そういって、博士に教えた。
「やっぱり、そうだったか。ふーん、あんな口をきくなんて、とんでもない話だ。奥へ行ったか。それはいかん。奥には大切なものや危険なものがあるんだ。とりわけダイナマイトの箱が積んである。あれをあいつに一撃されようものなら、この研究所の塔《とう》は爆風《ばくふう》のためにすっ飛んでしまうだろう。君たち、早くわしをあいつの行った方へつれていってくれ」
ダイナマイトの箱
ダイナマイトの箱が積んであるという。
それはたいへんだ。鉄の拳《こぶし》を持っている強力《ごうりき》の機械人間が、もしあやまって、そのダイナマイトの箱をぽかんと一撃したら、たちまち大爆発が起こって、建物も人間も岩盤《がんばん》さえ吹きとんでしまうであろう。
(なんだってこのおじさんは、ダイナマイトの箱なんか、たくわえているのだろう)
と、少年たちは、へんに思いながらも、博士をたすけて、地階の奥へ連れていった。
「ああ、そこに機械人間がいます」
井上少年が叫んだ。
「え、機械人間がいたか。なにをしている」
博士が、見えない目を大きくひらいて、緊張《きんちょう》する。
「一生けんめいに、機械や何かを見ていますよ。あッ、箱を見つけました。たいへんだ。ダイナマイトと書いてある箱ですよ」
「ううむ。とうとう見つけたか。困った。手あらくあつかわないようにしてもらいたいものだが、……あッ、そうだ。さっきのふるい制御台を使って、あの機械人間を取りおさえてしまわねばならない。戸
前へ
次へ
全97ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング