「ぼくは、戸山です」
「おお、戸山君か。戸山君、わしを機械人間の制御台のところへ早くつれていってくれ。おねがいする」
「いいですとも。その制御台というものは、どこにあるのですか」
「この部屋の……この部屋の階段の右手に、奥にひっこんだ戸棚《とだな》がある。そのまん中あたりに立っている横幅《よこはば》二メートル、高さも二メートルの機械で、正面のパネルは藍色《あいいろ》に塗ってある。それが制御台だ」
「ああ、それは、めちゃめちゃにこわれています。まん中と、そのすこし上とに、砲弾《ほうだん》がぶつかったほどの大穴があいて、内部の部品や配線がめちゃくちゃになっているのが見えます。あんなにこわれていてはとても働きませんね」
「うーん、それはたいへんだ。だれがこわしたのかしら。するといよいよおかしいぞ。機械人間《ロボット》は、ひとりで上に動きだすはずはないのだ。いや、待てよ。地階《ちかい》の倉庫《そうこ》に、古い型の制御台が一つしまってあった。あれをだれかが使って、機械人間をあやつっているのかな」
「それなら地階へいってみましょうか」
「おお。すぐつれていってくれたまえ。ここから見えるはずの階段のわきから、地階へおりる階段があるから、それをおりるんだ」
「はい。分かりました。おい羽黒君、井上君。手を貸してくれ。おじさんを両方から支《ささ》えてあげるのだ。……おお、よし。おじさん、さあ歩いてください」
「ありがとう」
一同は歩きだした。
がっちゃん、がっちゃん、がっちゃん。
「あ、あの音は……」
博士は、さっと顔色をかえて立ちどまる。
「おじさん。あの機械人間が、ぼくたちのうしろからついて来ますよ」
「うーむ、ふしぎだ。今まで、あれ[#「あれ」に傍点]はどこにどうしていたのかしらん」
「ぼくらの前に立って、おじさんの話をじっと聞いていたようですよ」
「なに、わたしたちの話を聞いていたというのか、あの機械人間が……」
博士は途中でことばをのんで、少年たちに腕をとられたまま、へたへたと尻餅《しりもち》をついた。
旧式《きゅうしき》の制御台《せいぎょだい》
少年たちは、この谷博士が非常に神経過敏症《しんけいかびんしょう》におちいっているのだと思った。
だから少年たちは、博士を左右から抱《だ》きあげ、いろいろとはげましてようやく博士を立ちあがらせた。
それか
前へ
次へ
全97ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング