の間の距離は、見るみるうちに接近して来た。
――敵との距離、あと三千メートル、――
またもや探知機からの報告。
「原子ロケット砲、射撃準備」
博士はマイクロホンで命令をくだした。一機のロケット砲室では、山形警部が一心不乱《いっしんふらん》に、目の前のスクリーンをのぞいている。その上には、X号をのせたロケットの像がうつりはじめた。警部は必死に照準《しょうじゅん》をあわせた。スクリーンの上に描《えが》かれてある、縦横十文字《たてよこじゅうもんじ》の細い線の交点に、敵のロケットが乗った時、発射装置のボタンを押せばいいのである。いまや、その瞬間がおとずれた。
「発射!」
宇宙航空船の巨体はまたもや、大きくがくーんとゆれた。白い煙をうしろに残した六本の原子ロケット砲弾は、ほとんど静止している敵のロケットを追って、青空を目にもとまらぬ速さで走りつづけて行く。
「全速上昇!」
宇宙航空船はものすごい勢いで上昇しはじめた。
四千……五千……六千……七千……
この時、眼下では、ものすごい大閃光《だいせんこう》とともに、原子弾の爆発が起こったのだ。熱帯の太陽にやきつくされたサハラ沙漠の上空には、五色の原子雲が渦《うず》まき、その雲はぐんぐんとのびあがって、この事宙航空船のあたりまで追って来たのである。
「さあ、これでX号も完全に死滅《しめつ》させることができたよ。わしの手で作ったものにはちがいないが、なんと恐ろしいやつだろう。感情も道徳もともなわない智力というものは、発達すればするほど、人類に害を及ぼすものなのだ」
博士は感慨深《かんがいぶか》そうに口ずさんだのである。
このようにして、X号はサハラ沙漠で最期をとげ、その最期の地の上空にたなびく原子雲のまわりを、二三度|旋回《せんかい》した宇宙航空船は、ふたたび機首をめぐらして、日本の国、三角岳《さんかくだけ》へ向かったのだった。
大団円《だいだんえん》
三角岳の研究所は、あとかたもないまでに破壊されていた。
さいわいにこのあたりが、メトロポリスになってから、気味わるがった人々は、いつのまにか、ここを捨てて、ほかに移住《いじゅう》してしまっていたので、人間の負傷は、ぜんぜんといってよいくらいなかったのである。
武装警官隊も、爆心《ばくしん》からは大分離れたところにおったため、二三人が軽いやけどを負っ
前へ
次へ
全97ページ中95ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング