かえている自分のもとのからだを見て、心配そうにたずねた。
「いまはそんなことをしているひまはないよ。もう少し待ちたまえ」
博士は機械をいじりながら、それどころではないというように、いらいらした調子で答えた。
「でも、それでは、夏ですから、からだがくさってしまいますよ」
なるほど、警部にとっては、それこそ天下の一大事である。
「それが心配だったら、冷蔵室へ入れておきたまえ」
「この中には、冷蔵室はあるのですか」
「もちろんだよ。この下の二階の中央のM17と書いてある部屋だ」
「ああ、それでやっと安心した。では行って来ましょう」
山形警部は、あぶら汗《あせ》を流しながら、自分のからだを背負って、えっちらおっちら歩きだした。こういう危急存亡《ききゅうそんぼう》の時でなかったら、それは吹きだしたくなるような、珍妙《ちんみょう》な光景であったろう。何しろ、女学生みたいな若い娘が大の男の裸のからだを背負って歩いているのだし、この精妙な操縦装置の前に坐って、機械をいじっているのがサルなのだから――
「よし、機械の調子はしごく良好《りょうこう》だ。それではだまって爆撃するのも卑怯《ひきょう》だから、X号に最後の宣告《せんこく》をくだしてやろう」
博士はマイクロホンに向かって、あの宣告を行ったのである。
「さあ、出発だ」
博士は始動装置《しどうそうち》のボタンを押した。ところが、機械の調子が少しへんなのか、航空船はなかなか飛びあがろうとはしなかった。
「おや、どうしたんだろう」
博士もさすがにあわてていた。あちらを直し、こちらをいじって、どうやら故障の原因はのみこめたようであったが、いざ出発となるまでには、七八分の時間がかかった。
「では出発」
博士はふたたびボタンを押した。それとともにこの三百トンのロケット航空船は、流星のように中天へ舞いあがったのだった。
X号の行方は
宇宙航空船は電光のように大空を横切って、まっすぐに上へあがって行く。博士の目の前のテレビジョン装置には、研究所や三角岳の建物が豆粒《まめつぶ》のように小さくうつったが、それもたちまち見えなくなって、関東平野がまるで地図のように、浮かびあがって来たのだった。
「先生、ものすごいスピードですね」
「ああ、あれが富士山ですか」
少年たちは、今までの命がけの冒険も忘れて、大陽気に、まるで遠足
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