う。それに地殻の変動によって、大地の温度がうんと上昇しているから、まるで炬燵《こたつ》をかかえているようなもので、地表は春の如しさ。心配はあるまい」
青倉教授は、楽観説を持している。
総監は、首をひねって、志々度博士の方を盗み見た。
「私は、青倉先生ほど、これを楽観的には考えられないのです。噴出物は、相当おびただしい量にのぼっています。空中へ舞い上ったものが、なかなか下へ落ちてこないようです。つまり、空中には火山灰の量が日増しにふえてくるように思います。確実な計算はできませんが、この調子でいくと、やがては、全世界の空が、暗曇程度に蔽いつくされるのではないでしょうか。すると太陽の輻射熱は、少くとも五、六十パーセントを失うようになる。悪くすれば、八十パーセント以上を失うかもしれない。それが毎日続いたとすると、これは一大事ではないかと思う。この前、北見老博士の説を、私は一笑に附しましたが、この頃になって、私は、老博士の説が、ある程度事実に近いと思うようになったのです」
「いや、それは、思いすぎだ」
青倉教授は、あくまで志々度博士の説を否定したのだった。
老博士の怪行動
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