「なんだろうね、そいつは。清ちゃんを怪我させて、黙って地面の下にもぐっているなんて」
丁坊は大へん腹を立てた。
「よし、僕が一ついって見てきてやろう」
そういって、お母さんやユリ子の停《と》めるのもきかずに、暗いおもてに飛びだした。
空魔艦
暗い雑木林の中だった。
しかし丁坊は、もともと日本兵のように豪胆者だったから、すこしもおそろしくない。
懐中電灯をてらしながら、中へ入ってゆくと、やがてその場所へ来た。
そこには地面に大きな穴があいていた。附近の笹《ささ》の葉には、清君の身体《からだ》から出た血らしいものがとんでいた。
見たけれど、穴は深いが、なんにもない。ただ一つ土のなかから、丸い環《たま》と、これについている沢山の麻糸《あさいと》とをみつけだした。
「なんだろう、これは?」
と、手にとりあげて見ていたが、そのうちに丁坊は、
「ああ、これはたいへんなものだ。成層圏《せいそうけん》という高い高い大空のことをしらべる風船の破れたものだ。この下に機械がついているはずなんだが、どこにあるんだろう」
そういって、彼はあたりを懐中電灯でもってさがしはじめた。
前へ
次へ
全68ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング