されてしまった。
捕虜《ほりょ》になった敵は、みなで三十人ばかり。その多くは怪我《けが》をしていた。
丁坊と仲よしだったチンセイは、空魔艦の中の冷い座席にひとりでねむっていたので、折よくそこへ第一番にとびこんだ丁坊にみつけられ、ぶじにたすけられた。
氷上にのこったのは、二機の空魔艦と、そのほかわずかの食料庫ぐらいのものであった。
大月大佐は、隊員をあつめ、東の空をあおいで高らかにばんざいを三唱した。怪我をしているものはあるが、生命《いのち》をおとしたものが一人もないのはまったく天祐《てんゆう》であった。
空魔艦の怪人たちは、いずれもその仮面をひきむかれた。その奇怪な防毒面の下には、やはり普通の人間の顔があった。しかし西洋人もあれば東洋人もあった。これは世界に大革命をおこそうというユダヤの秘密結社の一味であった。もし時がくれば、この空魔艦を相手国には知られぬように、成層圏といわれる高い空にとばして、各国の首都をひとおもいに大爆撃しようと考えていたことがわかったが、その空魔艦こそ、じつに世界中どこをさがしても、みあたらない大進歩をとげた飛行機であったのだ。思えば、日本の国もあぶな
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