いことであった。
 空魔艦は、若鷹丸探険隊員の手によって、うまく分捕《ぶんど》ることができた。しかしこれをどうして日本まで動かしたらいいのであろうかと、大月大佐たちは困っていた。
 そこへ突然、探険隊の消息《しょうそく》を心配して日本から有力な飛行隊が大挙して飛んできたので、大月大佐以下は生命をすくわれた上、この大きな土産《みやげ》空魔艦を捕虜とともに飛行隊へ手わたすことができて、重なる悦《よろこ》びであった。もしこの救援飛行隊が、もう四五日もはやくこの極地へとんでくれば、そのときは空魔艦とはなばなしい戦闘をしたことであろうが、丁坊の勇ましい言葉によって決死隊をさしむけた若鷹丸探険隊が、一足お先に手柄をたててしまったことになった。
 お母さんは、丁坊の帰京を、ゆめかとよろこんだ。おなじ心配をしていた吉岡清君もその妹ユリ子もすぐ丁坊のうちへとんできて、うわーっといってだきついた。
 丁坊はもうホテルの給仕《きゅうじ》をやめてしまって、立派な飛行機博士になるために、いまでは上の学校へ通って勉強をしている。
 いつも丁坊の味方になっていた中国人チンセイは、丁坊につれられて東京にやってきたが、
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