のやることは、空魔艦をうごけないようにすることであった。
 大月大佐の甲組の方は、敵と撃ちあい切りあう戦闘部隊であった。
 丁坊の背中にあるのは、ダイナマイトが五本と手榴弾《てりゅうだん》が十個に、食糧が二食分。これでも少年には相当の重さであった。


   空魔艦の最後


 空魔艦の根拠地がいよいよ目の前に見えてきた。そのころ急に天候が険悪になってきて、風がひゅうひゅうとふきだし、氷上につもっている粉雪を煙幕のようにふきはらった。
 それをじっとみつめていた松川隊長は、
「橇犬《そりいぬ》にみつけられては、なにもならないから、風下《かざしも》からしのびこむことにする。この風で、風下からゆくのはつらいだろうけれども、どうか皆がんばってくれ」
 といった。
 一行は、なあにこれしきの風がなんだと、大いにはりきり、五人が縦にならんで腕をくみ、転ばないようにして根拠地に押していった。
 はじめのころはソ連機などがうるさく攻めてきたものだが、空魔艦はそいつらをぽんぽん射おとしてしまったので、それ以来おそれをなしてやって来ない。北極の空は空魔艦の天下であった。だから今ではもう空魔艦は、自分の力
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