である。
 また夜が来た。
 腹をこしらえて、氷の室をでる。そしてまた一歩一歩、氷上行軍がはじまるのであった。
 第三夜をおくり、第四夜を氷上にむかえた。
 先頭に立って歩いていた松川理学士が、一つの氷の丘をのぼったとき、
「おお、向うに明るい灯が輝いている」
 と叫んだので、丁坊たちはわっといって、氷の丘をのぼった。
「ああ見える。あれが空魔艦の根拠地だ」
 点々と輝いている灯のかたちからいって、それは丁坊に見覚えのある根拠地にちがいないことが分った。
 一行はそこにしばらく憩《いこ》うことにした。それは別のみちをとおってくる大月大佐指揮の甲組がおいつくのを待つためであった。その夜おそく、大月大佐の元気な声が、闇の中からきこえた。
「よおし、明日《あした》の夜までゆっくり英気をやしなって、いよいよ最後の活動をはじめよう」
 両組は、途中で敵に見つけられもせず、道もついていて、今ここにうまく出会ったことをよろこびあった。
 さていよいよ第五夜がやってきた。
 決死隊は、ふたたび甲乙の二組にわかれ、闇の中をいさみ出発した。戦闘につかうものだけを持ち、他はみなそこにのこしておいた。
 乙組
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