て進むこととなった。
 丁坊は乙組になった。


   決死隊出発


 出発は、その翌日の夜になった。
 昼間は空魔艦に見つけられるおそれあるので、夜にしたのだった。
 隊員は身体をすっかり氷とみまがう白装束《しろしょうぞく》でつつんだ。これは敵の眼をできるだけあざむくためであった。
 まず松川学士を隊長とする乙組が出発した。
「じゃあ皆さん、いってきますよ。きっと空魔艦をぶん捕《ど》ってきますよ」
 丁坊は元気に出発した。
「どうか本当に空魔艦をぶん捕っておいでよ。丁坊くん、ばんざーい」
「丁坊、しっかり頼むよ。おれもすぐ後から出発する」
 と、大月大佐も大きな声で一行をはげました。
 冷い氷上を、一行はひとりひとり重い荷物をせおって進軍をおこした。橇《そり》もなければ、犬もいない。歩きなれない氷上を、一行は小暗《こぐら》いカンテラの灯をたよりにして、一歩一歩敵地にすすんでいった。
 夜が明けかかると、一行は大いそぎで氷を掘り目立たぬ氷の室《へや》をつくった。そして一日その中にもぐりこんで、眠られぬ時間をしいて睡った。敵地へしのびよるには、昼間歩いてはならぬ。見つけられてはおしまい
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