手真似の命令だ。
 隊員が、袋を切りひらいてみて愕《おどろ》いた。その熱い箇所から出てきたのは、精巧な無線の器械であった。よく見ると、マイクロフォンもついている。熱いのは、そこに点《とも》っている真空管が熱しているせいだった。
 そこに居合わせた無線技士が、真空管をそっと外した。
 そこでその器械は働かなくなった。もう喋《しゃべ》っても大丈夫だ。
「隊長。これは無線電信の送信装置ですよ。いままで真空管がついていたところを見ると、この器械のそばで喋っていたことは、すっかり電波になって空中を飛んでいたわけですよ。これは空魔艦のたくらみです。だからこっちの話はすっかり向うに聞かれちまったわけですぞ」
 と無線技士は顔色をかえて、大月大佐にその精巧な器械を指した。
 隊長は大きくうなずいて、
「うむ、気がついたのが遅かった。いや、それで丁坊少年を空魔艦が氷上になぜおとしたか漸《ようや》く分った。すっかり聞かれてしまったらしい」
 丁坊の愕きは、更に深いものがあった。彼は自分でその変な器械を背負っていたのだから。そして秘密にしておかなければならぬ若鷹丸探険隊の重大な決心を、憎《にく》い空魔艦に知
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