の愛国心にすっかり感動してしまった大月大佐は、丁坊の方によると、袋に入った少年をしっかと抱えたのであった。そのとき大佐は、おやと思った。
それはたまたま大佐の手がふれた袋の一ヶ所がたいへん熱をもっていたのである。
大佐はびっくりしたが、同時にきらりと頭にひびいたものがあった。始めからどうも変だと思っていたのは、この少年の服装だ。ところが、いまその袋の下の方に手をふれてみたところが、たいへん熱い。
なにがこう熱いのであろうか。
空魔艦は、少年のために懐炉《かいろ》を入れておいたのであろうか。まさか、そのような親切が空魔艦の乗組員にあるはずがない。
大月大佐は大いに怪《あや》しみ、考えるところがあって丁坊には黙っているように合図し、隊員をよんで、袋の口を開くと丁坊をそっと袋の外にひっぱりだした。
外はなにもかも凍りついている寒さだ。袋を出たとたん丁坊は大きな嚏《くしゃみ》を二つ三つ立てつづけにやった。隊員は用意の毛布で、丁坊の身体をつつんでやった。
大月大佐は、一同に声を出さぬよう命令し、袋の中を隊員に調べさせた。
「この温いところに、何が入っているのか、よく調べろ」
と、
前へ
次へ
全68ページ中54ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング