重大な話を隠されたマイクロフォンの前に始めようとする。ああ危《あぶな》い危い。
重い使命
空魔艦「足の骨」の船内では、隊長「笑い熊」をはじめとし、主脳部の連中がそろって高声器の前へあつまっていた。それはいましも、水上の探険隊長大月大佐と丁坊少年の重大なる話が始まるところだったからである。
「丁坊。お前が熱心な愛国心をもった日本人だということはよく分った。では、わが探険隊の目的というのを教えてやろうよ」
と、これは大月大佐の声だった。
「ああ、隊長さんとうとう分ってくれたのですね。僕はこんなに嬉しいことはない。さあ聞かせてください。こんな極地へ探険にやってきた目的というのを」
と、これは丁坊の声である。
いよいよ重大な秘密が洩《も》れそうである。氷上の探険隊員は誰一人として、この会話がそのままそっくり空魔艦の高声器から響きわたっているとは知らない。
その高声器の前へ、怪人隊長「笑い熊」は章魚《たこ》のようなマスクをかぶった顔を近づける。
「――じゃあ丁坊。よく聞け。これは大秘密だがお前も知ってのとおり、このごろ北極に近い地方に、恐ろしい大型の飛行機をもった国籍不明
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