しょう」
「ごま化してはいけない。じゃあ聞くが、なぜ空魔艦はお前をこの若鷹丸の難破しているところへ落下傘で下ろしたのだ。その理由を説明したまえ」
 丁坊はそういう風なことを聞かれて、全く困ってしまった。大佐は自分のことを空魔艦の廻し者だと思って、気をゆるさないのだ。


   秘密の仕掛


「僕、なんにも知らないのです。なぜこんなところに下ろされたか知らないのです。もし知っていれば同じ日本人の隊長さん方に喋《しゃべ》りますとも」
「いや、儂《わし》には、お前が本当に日本人かどうかということが分らないのだ」
「ええっ、僕が日本人でないかも知れないというのですか。ああ、そんな馬鹿なことがあるものですか。僕は立派な日本人です」
 丁坊はわっと泣きだした。そうであろう。そのくやしさは尤《もっと》もだった。日本人が日本人でないと疑われるくらい情けないことがあろうか。
 大月大佐は、丁坊の眼からぼたぼた流れる涙をしばらく見つめていたが、やがて、
「――お前が日本人であることがはっきりわかるか、それとも空魔艦がなぜお前を下ろしたかその理由《わけ》が分るか、そのどっちかが分らない間は安心《あんしん》
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