月大佐以下二十名の隊員が入り、小さい三つの天幕には、陸あげされた器械や器具などが入れられた。
 大月大佐は、大きい天幕の中に新しくつくられた席に腰をおろすと、
「おい、さっきの空魔艦から降ってきた日本少年をひっぱってこい」
 と命じた。
 達磨《だるま》のような姿の丁坊は、左右から二人の隊員によってひっさげられ、隊長の前にひきすえられた。
「どうだ、丁坊――といったな。若鷹丸はとうとう沈んでしまった。お前はいい気持だろう」
「えっ、なんですって」
 丁坊は自分の耳をうたがって、大佐の言葉を聞きかえした。
「お前は、いい気持だろうというんだ」
「すこしもいい気持ではありません。僕、たいへん口惜《くや》しいです。隊長そんなことを、なぜ僕にいうのですか」
 すると大月大佐は、少年の顔をぐっと睨《にら》みつけて、
「お前にはよく分っているじゃないか。お前は空魔艦の廻《まわ》し者だ。そして若鷹丸を沈めにきたということはよく分っている」
「なんですって、隊長さん。ぼ、僕は日本人ですよ、空魔艦に攫《さら》われた者ですよ。空魔艦を恨《うら》んでも、どうして同国人である隊長さんなどに恨《うら》みをもちま
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