こぶる困っている様子であった。
「私《わし》はこの探険船の団長大月大佐だ。お前は何者か。そしてなぜ落下傘で氷上におりてきたか。さあ、包まず話せ」
そういわれて丁坊は、のぞむところと、いままでのいきさつをなにからなにまで話をした。
丁坊の話を感にたえないような顔で聞いていた大佐はそこで腕組《うでぐみ》をして、
「わけが分らずに、氷原へお前は下ろされたというのだね。そしてあとから拾いにゆくといったのだな。はて空魔艦からの変な贈物だわい。一体どういうわけだろうか」
といっているところへ、一人の船員が階段を転がるように入ってきた。
「おお、大佐、たいへんです。船腹《せんぷく》がさけました。船はめりめり壊《こわ》れています。もう間もなく――そうです、十分とたたないうちに、この船は氷の下に沈んでしまいますぜ」
「ええ、船が――船がとうとう氷に壊されたか。今までそんなけはいも見えなかったのに、どうしたんだろう。いや、これも空魔艦のなせる業にちがいない。さあ全員をよびあつめて、そしてすぐ氷上へ避難だ」
丁坊の訊問《じんもん》どころではなく、難破船は大混乱となってすぐさま荷物の陸あげにかかった。
前へ
次へ
全68ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング