は、そのどっちであるかを一刻もはやくたしかめたいと思った。
 氷原はぐんぐん足の下にもりあがってくる。はじめは小蒸気《こじょうき》ぐらいに思えた難破船が、だんだん形が大きく見えてきて、今はどうやら千五六百トンもある大きな船に見えてきた。
 すると船上に、今まで見えなかった人影が五つ六つ現われているのに気がついた。
「ああ、人だ。あの船に人がいる」
 丁坊は嬉しかった。
 たとえ善人であろうと悪人であろうと、そんなことはどうでもいい。生きた人間がいさえすればいいのだ。氷原に誰一人として生きた人間がいなければ、このまま落下傘で下りてみたところで、丁坊は餓死《がし》するか、さもなければこの辺《へん》の名物である白熊に頭からぱくりとやられて、向うのお腹《なか》をふとらせるか、どっちかであろう。
 しかしもう大丈夫だ。生きた人間が見ている以上は自分をかならず助けてくれるであろう。
 丁坊は、はじめていつものような快活な少年にもどっていった。
 はたして丁坊の思ったとおり、彼の一命はうまくすくわれるであろうか。


   銃声《じゅうせい》


 落下傘はついて、丁坊を氷原の上になげだした。
 風
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