《かぶ》っているので、下から見ると、異様なお化けが巨人飛行機にのっているとしか見えなかった。
「さあ、はやく乗った!」
 十四五人の怪人たちは、手まねをして、チンセイに、機の中に入るように命じた。この十四五人の怪人は何者であろうか。これこそ実は、この空魔艦の主脳部の人たちであったのである。
 チンセイが乗ると、怪人は丁坊のそばによってきて、かるがると両方からぶらさげた。そして、よいこらと空魔艦のなかに積みこんだのであった。
 どこへ空魔艦は行くのか。
 爆音が高くひびくと、空魔艦は氷上に滑走《かっそう》をはじめた。ぴんと張った両翼は、どう見ても巨大ないきもののように思えてならない。そのうちに空魔艦はふわりと空中に浮いた。
 チンセイは丁坊のそばにいる。
「チンセイさん。もう一つの空魔艦は、ついてこないのかい」
「いや、一緒に来るはずだよ。ほらほら、いま滑走をやっているよ」
 丁坊は身体の自由がきかないから、外が見えない。
「もう一つの空魔艦は、なんという名前なの」
「ああ、あれかい、あれは『手の皮』というんだ」
「へえ、変な名前だね。これが『足の骨』で、もう一つのが『手の皮』かい」

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