いか」
丁坊はチンセイの物語に、たいへん心がひかれた。
「――だがね、僕が林の中で成層圏探険の風船がおちているのを見ていたぐらいで、さらうのは、おかしいじゃないか」
「そうじゃないよ。空魔艦が、そういうものを日本の国の上で測量しているのが知れては困るというんだ。だからお前をさらってきたんだ」
「へえ、一体、空魔艦は、どこの国の飛行機なのかね」
「うふん、また訊《き》いたね。いくど訊いても同じことだ。空魔艦は、世界のどこの国の飛行機でもないんだ。それ以上は、今は云えない。しかし気をつけたがいい、お前は逃げないかぎり日本へは帰れないだろう。あの人たちはお前を逃がさんつもりらしいぞ」
「ええッ、日本へかえさないって」
そういっているところへ、格納庫の中で手入れをしていた空魔艦が、出発のためにしずしずと巨体を氷上にあらわした。そして例の十四五人の怪人たちが、チンセイと丁坊の待っている方をむいて駈けてきた。
僚機《りょうき》「手《て》の皮《かわ》」
空魔艦「足の骨」は、出発の位置についた。
この巨機の窓という窓からは、いろいろな顔がのぞいている。しかしどれもこれも防毒面を被
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