とを早く話しておくれよう」
「おう、そうだったな」
 とチンセイはわれにかえり、
「なんでもお前は、この空魔艦の秘密を見たそうじゃないか。空魔艦がとんでいるところを見たんだろう。そういってたぜ」
「嘘だよ。空魔艦なんか、僕の村にいたときは見なかった。ただ林の中で、成層圏《せいそうけん》の測定につかった風船や器械が落ちているのを発見しただけのことだ」
「それ見ろ。そいつが困るんだ。おれは三年前、この仲間に入ったから、多少は知っているんだが、この空魔艦の一つの仕事は、あの高い成層圏を測量し、そして世界中のどの国よりも早く、成層圏を自由に飛ぼうと考えているらしい」
「なぜ成層圏なんて高い空のことを知りたがっているのかい」
「それはつまり――つまり何だろう、成層圏を飛行機でとぶと、たいへん早く飛行が出来るのだ。たとえば今、太平洋横断にはアメリカのクリッパー機にのってもすくなくとも三日間はかかる、ところが成層圏までとびあがって飛行すれば、せいぜい六時間ぐらいで飛べるんだ。ただし空魔艦ならもっと早く飛べるよ」
「へえ! 空魔艦も成層圏をとぶのかい」
「そうさ、第一あのふしぎな恰好を見ても分るじゃな
前へ 次へ
全68ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング