「ねえ、チンセイさん、云っておくれよ。僕はどうせこんな風に捕虜になっていて、逃げようにもなんにも出来ない身体なんだよ。すこしぐらい、僕の知りたいと思っていることを教えてくれたっていいじゃないか」
丁坊は、ここを先途《せんど》と、チンセイの心をうごかすことにつとめた。
チンセイはもともとお人よしであるらしく、丁坊の言葉《ことば》にだんだん動かされてきた。
「じゃあ、話をしてやるが、黙っているんだぞ。こういうわけなんだ――」
チンセイは、怪人たちに気取《けど》られぬよう、そっぽを向いて早口で語りだした。はたして彼はどんなことを口にして、丁坊の心をおどろかそうとするか?
空魔艦の秘密
「おい丁坊、ほんとをいうと、おれは空魔艦『足の骨』のコックなんだ。料理をこしらえたり、菓子をつくったりするあのコックだ。おれは、お前と同じように、攫《さら》われてきたんだ。それはおれが杭州《こうしゅう》で釣をしているときだったよ。突然袋を頭から被せられてかつがれていったのだ。あれからもう三年になる。早いものだ」
そういってチンセイは、ふかい溜息《ためいき》をした。
「チンセイさん。僕のこ
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