とりまいてしまった。
危《あやう》き一命《いちめい》
毛皮の袋の中に入れられ、首だけちょこん[#「ちょこん」に傍点]と外に出している丁坊を、ぐるりと取巻いた十四五名の防毒面の怪漢たちは、丁坊を指しながらなにごとか分らぬ国のことばで、べちゃくちゃと喋《しゃべ》っていた。
「なんだ。なにを騒いでいるのだろう。ははあ! 僕をどう始末《しまつ》しようかと相談しているらしいぞ」
丁坊は、怪漢たちの心の中をそういう風に察した。
そして、どうなるのだろうと成《なり》ゆきをみていた。はたして、しばらくすると、その中の一名が、ほかの人をおしのけて、丁坊のまえにつかつかと出てきた。そしていきなり丁坊の鼻のさきへ、ピストルの銃口をむけた。
「あッ、僕を殺そうというんだな。殺されてたまるものか。うぬッ――」
と、丁坊は、かなわないまでも、その怪人にくいつこうと思って、一生懸命に立ちあがろうとしたが、どうして立ちあがれるものか。なにしろ丁坊は、首だけ外にだして袋の中に入っているんだから、まったく自由がきかない。くやしいが、ついにこんな見もしらぬ氷原の上で、防毒面の怪人に殺されるかと思い、丁
前へ
次へ
全68ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング