ことかと、丁坊は片唾《かたず》をのんで窓の外の、人のゆききをながめている。
するとそのとき、少年のうしろの扉があらあらしく開いた。
はっとうしろをふりかえると、防毒面《ぼうどくめん》に防毒衣《ぼうどくい》をつけた人相のわからない者が、二人ばかり入ってきた。
なにか分らぬ言葉で叫ぶと一人が逞《たくま》しい両腕をのばして、丁坊をむずとつかまえた。
「な、なにをするんだ」
丁坊は、力のかぎりはねまわった。が、とても大人の力に及ばない。そのうちにもう一人がもってきた袋のようなものの中に、丁坊のからだはすぽりと入れられてしまった。その袋は丁坊の首のところでぎゅーとバンドがしまるようになっていた。
二人の怪しい男は、防毒面の硝子《ガラス》ごしに、にやりと笑ったようである。
それから二人は、丁坊を入れた毛皮の袋を両方からかついで、飛行機の外にはこびだした。
一体どうなることだろう。
丁坊の運命はいまや、あやしいみちをとおっている。
やがて丁坊の入った袋は氷上にどしんとおかれた。
すると左右から、いずれも怪しい服をつけた人間が十四五人あつまってきて、丁坊をまんなかにぐるりとまわりを
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