ンセイは、ぷいと座をたっていったが、まもなく金属せいの丼《どんぶり》のようなものをもってきた。そのなかからは、あったかそうに湯気《ゆげ》が立っていた。それを喰《た》べろというので、なかを見ると、うまそうな中華そばが入っていた。
 中華そばを喰べながら、丁坊はどうして自分がこんなところへつれてこられたのかときいた。
「さあ知らないね」
「でもチンセイさんは、この飛行機の各室を見まわっているえらい人だというから、知らないことはなかろう」
「うん、えらいことはえらいが、知らんことは知らないよ。しかし今に機長が話をしてくれるだろう」
「えっ、機長てなんだい」
「機長かね。機長はこの飛行機の中にのっている百二十人の人間のなかで、一等えらい人のことだ」
「ああそうか。船でいうと、船長みたいなものだね」
 と丁坊はいったが、内心にはこの飛行機に百二十人もの人間がのっているときいて、非常におどろいた。今までに、そんなに沢山の人間がのりくんでいる飛行機の話をきいたことがない。
「チンセイさん。この飛行機は、なんのためにこんな寒いところを飛んでいるのかね」
「それはわかっているじゃないか。客と荷物をはこぶ
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