のに気がついて、顔をそっとその方へよせた。そのときの愕《おどろ》きくらい、丁坊にとって大きい愕きは外になかった。
「うわーっ、飛行機にのっているのだ」
しかしその愕きは、まだまだ小さかった。彼の目がひょいと向うの方にうつると、
「ああっ、――」
と、愕きのあまり息がとまるように思った。
なんであろう、あれでも飛行機なのであろうか。まるで要塞《ようさい》に羽根が生えてとんでいるようだ。
それが世にもおそろしい空魔艦とは知らず、丁坊は小窓にかじりつくようにして、向うを飛ぶその空魔艦の姿に見入った。
空中戦のはて
いつの間にさらわれてしまったのか、丁坊が気のついたときは飛行機のなかの寝台にねていたのだ。ところがその飛行機も、ただの飛行機ではなかった。
空魔艦とよばれる世界一のおそろしい飛行機であった。まるでお城に翼をはやしたような、ものすごいかっこうをしている空魔艦であった。
大砲や機関銃やらが、いくつあるのかちょっと見たくらいでは、数《かず》がわからないというたいへんな攻撃力をもっていた。
その空魔艦のおそろしい姿を、丁坊は窓のそとに見た。そこをとんでいるのだ
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