のやることは、空魔艦をうごけないようにすることであった。
 大月大佐の甲組の方は、敵と撃ちあい切りあう戦闘部隊であった。
 丁坊の背中にあるのは、ダイナマイトが五本と手榴弾《てりゅうだん》が十個に、食糧が二食分。これでも少年には相当の重さであった。


   空魔艦の最後


 空魔艦の根拠地がいよいよ目の前に見えてきた。そのころ急に天候が険悪になってきて、風がひゅうひゅうとふきだし、氷上につもっている粉雪を煙幕のようにふきはらった。
 それをじっとみつめていた松川隊長は、
「橇犬《そりいぬ》にみつけられては、なにもならないから、風下《かざしも》からしのびこむことにする。この風で、風下からゆくのはつらいだろうけれども、どうか皆がんばってくれ」
 といった。
 一行は、なあにこれしきの風がなんだと、大いにはりきり、五人が縦にならんで腕をくみ、転ばないようにして根拠地に押していった。
 はじめのころはソ連機などがうるさく攻めてきたものだが、空魔艦はそいつらをぽんぽん射おとしてしまったので、それ以来おそれをなしてやって来ない。北極の空は空魔艦の天下であった。だから今ではもう空魔艦は、自分の力のつよいことをたのんで安心し、まさか若鷹丸の探険隊などがおしかけてくるまいと思って油断していた。
 松川隊の五勇士は、思いのほかやすやすと根拠地の中に入った。
「それいまのうちだ。爆破作業を始め」
 五勇士はそこでちりちりばらばらになった。
 油タンクや、飛行機のあな蔵《ぐら》をみつけては、ダイナマイトを植えていった。時計を見て、時刻をはかると導火線に火をつけた。さあ、あと三分間で爆発する。
 そのうち空魔艦二機だけは、そのままにしておいたが、五人の勇士はぞくぞくとその前に集ってきた。
「どうだ、ダイナマイトは、うまくいったか」
「うん、大丈夫だ。いまにたいへんなことになるぞ」
「じゃあこの辺で、空魔艦のタイヤをぶちこわそう。さあ、みんな掛れ!」
 一同は手榴弾《てりゅうだん》をふりあげた。
 そいつをがーんとなげつけて、さっと身体を氷上にふせた。空魔艦のタイヤのそばには、黒い手榴弾がごろごろあつまってきた。――と思う間もなく、大音響をあげて爆破!
 タイヤは破れた。
 空魔艦は翼をがくりとゆすぶって、手榴弾のつくった穴の中に、轍《わだち》をすべりこませる。
 敵が起きて来たらしく、あ
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