わーン、ぐわーン。
 ずしんずしんごごごーっ。
 あっちにこっちに、硬い氷をやぶって吹雪のような氷片がとぶ。
 まっくろな硝煙は、氷上をなめるように匍《は》う。
 実におそろしい光景がいくたびとなく、くりかえされた。
 隊員は、声をからして、お互《たがい》にはげましあった。
 この猛烈な爆撃に、探険隊の天幕《テント》などは、一ぺんにふきとんでしまった。隊員のなかにも、怪我人《けがにん》がそれからそれへと現れ、流血は氷上をあかくいろどった。
 空魔艦は、都合三十個の爆弾をおとし、天幕がすっかりふきとび、怪我人が相当出たのをたしかめると、機首をかえして元来た北の空に姿をかくした。
 こうして危難はひとまず去った。
 大月大佐は、すぐさま人員点呼をおこなうとともに天幕の中にあった食料などをしらべた。
 怪我人は八名、死者は二名。
 食料品などが半分ばかり氷の下におちてしまった。
 かなりの損害であった。
 探険隊の運命はどうなるのか、たいへん心ぼそいことになった。
 その夕方、さわぎが一段かたづいたところで、大月大佐は隊員をあつめ、あらためてこれから探険隊のすることを相談した。
「やっぱり、はじめ考えたとおり、空魔艦の根拠地へ攻めてゆきましょう」
 と、まっさきにいったのは丁坊少年だ。
「だが、食料は半分になったし、死傷は十名にのぼる。これではとてもつよい決死隊をつくるわけにはゆかない」
 と、他の隊員が元気のないことをいった。
 すると大月大佐は、ぬっと立ちあがり、
「隊員のかずがすくなくなっても、日中戦争の徐州《じょしゅう》攻略のときのように、うまい作戦をたてれば成功することもあるんだ。よし、やっぱり決死隊を作って一か八か攻めてゆこう」
「それがいい。ばんざーい」
 と、元気のいい隊員は両手をあげて、隊長の考えに賛成した。
「うむ、それではこれから作戦を考えよう。人数はすくなくとも、必ず成功するという戦法をみんなで考えだすのだ」
 夜をとおして、みんなが智恵をしぼったあげく、これならまず大丈夫という作戦がきまった。
 そこでいよいよ決死隊のかおぶれがはりだされたが、隊員の数は、前より五名減って、十人となり、怪我をした者はみな天幕に留守番をすることとなった。もちろん決死隊長は大月大佐であり、大佐は甲組四名をひきつれてゆくこととし、松川学士は乙組四名をひきつれ、二隊になっ
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