返事をせんのか、ふーん、すると火星人が自分たちの乗物のところに帰ってきたのかも知れんな」
 艇長がうなずいた。そして眉をしかめた。それは、こういうことを考えたからである。つまり火星人たちが第五斥候隊を撃破してしまって、悠々と自分たちの乗物のところに帰って来て見ると、其処《そこ》にはまだ第四斥候隊が頑張っていた。しかも第四斥候隊は、たった今、辻艇長からその火星人の乗物を渡してはいかん、という命令を受けたばかりなので、ここで又、大乱闘がはじまってしまったのではあるまいか――。それで無電連絡が切れてしまったのではあるまいか――。
「うーん」
 部下思いの辻艇長は、眼の前にひろげられた月面図の上に腕を組むと、しきりにうなっていた。第五斥候隊は、救援隊が到着する前に全滅してしまったのかも知れない。その上、風間、木曾の二少年を発見した第四斥候隊も、たった今出発した救援隊の到着するまで、うまく相手を防いでいるかどうか疑問である。何しろ相手は、得体《えたい》の知れない火星人なのだ。
「困ったことになったぞ……」
 辻中佐は、この馴《な》れない月世界の上で奮闘している部下のことを、しきりに心配していた。
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