かけて、しきりに連絡をとっていた無電員の一人が、とつぜん大きなこえをあげた。
そのこえが、あまりに大きかったので、艇長も幕僚も思わずその方をふりかえった。するとその無電員は一枚の受信紙をつかんで、幕僚の方へふりながら、
「たいへんです。第五斥候隊からの救難信号です。そして、その信号の途中で、無電が、はたと切れてしまいました。この電文をごらんください」
と、無電員は、はあはあ息を切らしている。よほどおどろいたものらしい。
その受信紙は、直ちに艇長の前にひろげられた。電文には始めは規定どおりの救難信号があって、そのあとに本文がはじまっていたが、
“……人間大の怪しき甲虫《かぶとむし》の形をした怪物およそ十匹にとりかこまれた。わが携帯用無電機を眼がけて、拳をふりあげて来る。無電機をこわすつもりか……”
そこで電文は切れている。
ああ第五斥候隊の遭難!
さきに第四斥候隊が行方不明で、心配しているとき、今また第五斥候隊がとつぜん怪物団にとりかこまれたという。この怪物団とは、火星の一隊であることにまちがいはない。
月世界のうえにまたもや血腥《ちなまぐさ》い事件がもちあがったのである。
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