びたび第四斥候隊あてに、無電で信号呼出《よびだし》をうっているのですが、更に応答なしです」
「無電機がこわれたのかな」
「さあ、そんなことはまずないはずだと思います。こっちを出かけるときに、そういう機械るいは充分に点検をしていくことになっていますから、故障のはずはありません。しかし、ひょっとすると……」
 と、この幕僚は、そこで次の言葉をのみこんだ。
「なんだね、ひょっとするとどうしたというのかね」
「いや、あまり不吉な言葉をはいては申《もうし》わけないと思い、ためらっているのですが……ひょっとすると、第四斥候隊は火星人の猛撃をうけて、どうかなったのではありますまいか」
「おお、そうか。火星人の猛撃をくらって、どうかしたのではないかというのか。ふうむ」
 辻中佐は、腕組みをして、頭を左右にふった。
「わしは、そうも思わないが、なにしろ何もいってこないし、こっちから呼び出してもへんじをしないのだから、こいつは困ったものだ。もうすこしまってみよう」
 辻中佐は、机上にひろげた月世界の地図へ再び目をおとした。しばらくたって、中佐の背後に、壁に向けてすえつけてある無電配電盤の前で、受話器を頭に
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